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コンバーティブル・ノートがポピュラーになった理由

Slicon Valleyの標識画像

こんにちは。ジョン佐々木です。

最近イチゴが分身を見つけました。これがふたりの写真です。どちらがイチゴか分かるでしょうか?

犬の写真

かつて(15~20年前)、シリコンバレーのベンチャー企業は、最初の外部からの資金調達を、「スキニーな」優先株と呼ばれる方法で行っていました。それは典型的なVC優先株投資の簡易版のようなもので、優先株であるものの、(普通株との価格差を正当化するための)配当と残余財産の優先権に限定されていました。

上記のようなファイナンスは、近頃は「シリーズ・シード」ファイナンスと呼ばれるようです。

ですが今は、シリコンバレーで、最初の外部からの資金調達で、コンバーティブル・ノート・ファイナンスを利用するベンチャー企業がどんどん増えているようです。コンバーティブル・ノート・ファイナンスとは、典型的には、投資家が当初ローンの形で投資し、将来一定の条件を満たしたときに自動的に会社の株式(通常は優先株)に転換されるものです。このようなコンバーティブル・ノート・ファイナンスが、非常にポピュラーになっているのはどうしてでしょうか。

それは、コンバーティブル・ノートによる資金調達(以下「コンバーティブル・ノート・ファイナンス」)が、優先株による資金調達(たとえ「スキニー」優先株やシリーズ・シードであっても)にまさる、会社、投資家双方にとっての利点を有しているからです。

| 1. バリュエーション不要

どんなシンプルな優先株ファイナンスでも、株価や会社の価値を交渉しなければなりません。これは非公開の会社、特にベンチャー企業には常に困難なことです。

コンバーティブル・ノート・ファイナンスでは、バリュエーションの交渉はノートが株式に転換されるまで先送りされます。

これによって時間と費用を節約できます。

| 2. シンプルなドキュメンテーション

どんなシンプルな優先株ファイナンスでも、優先株の条件を交渉しなければなりません。定款の変更が必要であり、州にファイリングをする必要があります。州のレビューを受けることになり、何らかの指摘を受ける可能性もあるため、より時間と費用がかかります。

さらに、株式引受契約(Stock Purchase Agreement)と、交渉の状況によって、更に1個2個の契約書(Investors’ Rights AgreementやStockholders Agreement(株主間契約))が必要になります。

一般的なコンバーティブル・ノート・ファイナンスで必要な書面は、ノートの引受契約とコンバーティブル・ノートの証書(convertible promissory note)だけです。そしてその最もシンプルなケースに関しては、極めて標準的なフォームがあり、多くの交渉は必要ありません。

この点でも時間と費用が節約されます。

| 3. 最小限のデュー・ディリジェンス

最もシンプルな優先株ファイナンスでも、株主になれば事業のオーナーの一部になりますので、通常、投資家は、ビジネスと法務のデュー・ディリジェンスを何らか行うでしょう。

対してコンバーティブル・ノート・ファイナンスをみてみると、投資家はノートが転換されるまでは貸主(債権者)です。この初期の段階では事業のオーナーではありませんから、会社のオペレーションにそれほど関心がありません(但し、回収リスクを審査するための基本的な財務デュー・ディリジェンスは必要と思われます。)。

そしてノートが転換されるときに(一定額の資金調達時に自動的に転換される条件になっていることが通常です。)、優先株ファイナンスのリード投資家は完全なデュー・ディリジェンスを行うことになるでしょう。ノート保有者は、リード投資家の労力に「ただ乗り」でき、コストも節約できることになります。

この点でも時間と費用が節約されます。

| 4. リスクヘッジ

投資家にとって、コンバーティブル・ノート・ファイナンスはリスクヘッジになります。ノートが転換されるまでは、投資家は貸主であり、会社が資金を調達できないときに、会社に対する権利行使において株主に優先します。そして、株主になるときには、会社は資金を調達できています。

コンバーティブル・ノート・ファイナンスでは、優先株ファイナンスの際に、リード投資家がバリュエーションの判断、契約交渉及びデュー・ディリジェンスを行うことになります。上述のとおり、これによって、ノート保有者は他の投資家の経験の恩恵にあずかれるだけでなく、コストを削減することができます。

| 5. 株主の権利がないこと

会社にとっては、コンバーティブル・ノート・ファイナンスは、株主に対する義務を負担せずに資金を調達する手段となります。

株主には、一定の情報請求及び検査に関する法的権利がありますが、貸主やノート保有者にはありません。契約上の権利を持つことはありますが、それは会社とノート保有者の交渉次第となります。

さらに、ノート保有者はしばらく後(ノートを転換するとき)まで株主になりませんので、コンバーティブル・ノート・ファイナンス実施時から転換時までに会社のバリューがあがれば、他の株主の希釈化も少なくて済むことになります。

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今後の記事で、コンバーティブル・ノート・ファイナンスをより詳しく説明する予定です。

SAFEやKISSといった、コンバーティブル・エクイティについては? これについても今後の記事で。

ご質問があれば、jsasaki@jsvlaw.comまでお気軽にご連絡下さい。

【参考和文作成:弁護士 林 賢治】

原本の記事(英語)(除):JSV外国法事務弁護士事務所
和文の記事:AZX法律事務所 AZXのブログの記事: http://www.azx.co.jp/blog/?p=1759